附属さいたま医療センター 内科系診療部

齋藤 慎之介

Shinnosuke Saito

基本情報

所属
自治医科大学附属さいたま医療センター 講師
学位
博士(2015年 自治医科大学)

researchmap会員ID
B000235836

日本精神神経学会 精神科専門医/指導医

一般病院連携 (リエゾン) 精神医学専門医/指導医

精神保健指定医

研究分野:臨床精神医学、病跡学


学歴

 2

委員歴

 1

論文

 41
  • 齋藤慎之介
    日本病跡学雑誌 (107) 45-54 2024年  査読有り筆頭著者
    色川武大は10代前半から入眠時幻覚を体験しており、30代中盤より体重増加、睡眠発作、脱力発作などの症状が徐々に増悪した。45歳頃にようやく精神科を受診しナルコレプシーと診断された。入眠時幻覚出現の時期と顕在発症の時期の乖離から、色川が自己投薬的にアンフェタミン系薬剤を常用していた可能性が考えられた。48歳時の『生家へ』を転換点として、ナルコレプシーの病的体験をさかんに取り入れた作品を描くようになった。作品群を概観すると①幻覚的色彩が一切ないもの、②人物像や物語に膨らみを与えたり幻想的な印象を付加したりする目的で補助的に幻覚的表現が用いられるもの、③現実、回想、幻覚、夢が混在し全体として混沌とした幻想的なものの3つに分類された。③の作品群では、ナルコレプシー特有の神経生理学的変化を基盤として、覚醒した意識と幻覚的世界が互いに侵入・包摂しあう混沌とした主観的体験が描かれていた。そしてそこに、主観的体験の豊穣さと混沌をぎりぎりまで保ちながら文学作品として成立させるバランス感覚が結びついた作品において、幻覚体験と創造性の密接な関連を見出すことができると考えられた。
  • 齋藤慎之介
    日本病跡学雑誌 (105) 55-66 2023年6月  査読有り筆頭著者
    ナルコレプシーに生涯苦しめられていた色川武大 (1929-1989) は、最晩年に精神病者の人生を描いた『狂人日記』を著した。本書は主人公の男が、精神病院へ入院する場面から幕を開ける。男は執拗な幻覚体験に苦しめられる。だが、同時に、それらに深い愛着を抱き、深く自足してしまっており、それゆえに、愛し愛されることを望む他者とつながりを持てないことが真の苦悩であった。やがて男は、ある女性との愛に賭けることを決意する。だが、やはり、愛し愛されたいと願う人や、人生に意義を与えてくれるはずのものに心を開くことはできず、絶望的な死を迎える。男には色川自身が抱えていたナルシシズムが投影されており、これが「狂気」の正体と考えられた。色川が本作を書いたのは、自らの心理的「死」をもう一度生き直そうとしたためであり、そこには「小説を書く」ことの自己治療的意義があったことを指摘した。それゆえ、本書は絶望を描きながらも希望を指し示すと考えられた。
  • 齋藤 慎之介
    日本病跡学雑誌 (105) 45-54 2023年6月  査読有り筆頭著者
    有馬忠士 (1940-1982) は、30歳時に統合失調症を発症し、入退院を繰り返すなか絵画制作活動をおこなった。ケースワーカーであった女性と結婚し、その支えにより晩年は油絵に没頭した。向精神薬の副作用のため41歳で急死した。作品の変遷を追うと、ある時期から太陽が頻繁に描かれるようになることに気がつく。当初それは複雑な重層の円形であったり、渦を巻く紅炎を持っていたりと、禍々しくけばけばしいものであった。晩年には、小さくはあるが赤く確たる存在感を持った太陽が、樹木とともに描かれ、それらは世間から孤立した静かな世界のなかで、2人の人間が息づいているかのような感触を持つものであった。彼の描く太陽は、精神病的なナルシシズムの世界を抜け出し、自己と他者、さらにはそれらがともにあるという現実を取り戻していくための橋渡しとなった精神的対象 (ネヴィル・シミントンのいう「ライフ・ギバー」) を描いたものだと考えられた。人間の生にとって本質的に重要なものをわれわれの眼にも見せてくれた有馬の作品は、真に芸術的なものといえるだろう。
  • 齋藤慎之介
    日本病跡学雑誌 (101) 20-26 2021年  査読有り筆頭著者
    刑事精神鑑定と病跡学において精神科医は、ある人物の過去を理解し説明しようとする歴史家の立場に立つとともに、歴史学的あるいは解釈学的な課題を背負い込むこととなる。病跡研究者は、対象人物やその創造が行われた現場からの時間的・空間的・文化的な距離の「遠さ」を強いられている。他方、精神鑑定人は、正確で豊富な情報や直接的な診察・検査をもとに、高い精度で過去の再構成ができる立場にある。だが、昭和25年の金閣放火事件の精神鑑定およびその後の犯人の経過が示すように、鑑定人は、犯行直後に精神状態を判断するという時間的な「近さ」、あるいは司法や当事者の利害関係、世論の反応、臨床的観点あるいは犯行に対する個人的感情といった、アクチュアルな関連との「近さ」を強いられている。過去の一時点に対する解像度の高い精神医学的再構成、いわば「虫瞰的」な過去の把握を目的とするのであれば、精神鑑定は優れており、他方、病跡学は、対象者の生涯を、一つのパースペクティブの内で概観する「鳥瞰的」な過去の把握に優れていると考えられた。病跡学の「鳥瞰的」な立場が、エピ-パトグラフィーや「時代病理の病跡学」などの発展領域を生み出すことに寄与した可能性を指摘した。
  • 齋藤慎之介, 加藤敏
    精神科治療学 36(3) 343-350 2021年  査読有り筆頭著者
    妄想性障害あるいは妄想型統合失調症といったパラノイア系疾患の患者は、過去の記憶をも妄想の素材とする。事例Aは40歳台男性で、危険運転を繰り返すなかで衝突事故を起こし、危険運転致傷罪で逮捕された。犯行後約2ヶ月経過した時点で突然、犯行時に集団ストーカーに追われていたという妄想を語り始めた。だがこれは、供述の変遷の検討により、妄想追想の作用によって過去の出来事が集団ストーカーの物語に次々と組み込まれていく妄想的体系化によって説明することが妥当であると考えられた。逮捕勾留という非日常的な環境は、① 自己保身の心性の影響、② 犯行の繰り返しの想起、③ 外部の刺激からの遮断といった要因から、妄想追想を発展させる可能性が示唆された。妄想追想は現代の操作的診断基準で言及されることはないが、精神鑑定のように過去の一時点における精神状態評価が求められる際には、常に考慮すべき重要な症候だと考えられた。

MISC

 16

書籍等出版物

 2

講演・口頭発表等

 41

担当経験のある科目(授業)

 1
  • 精神医学  (自治医科大学, 茨城県結城看護専門学校, 県南高等看護専門学院, さいたま看護専門学校)

共同研究・競争的資金等の研究課題

 3