松山 泰, 長嶋 孝夫, 増田 智一, 岩本 雅弘, 吉尾 卓, 岡崎 仁昭, 大槻 マミ太郎, 簑田 清次
自治医科大学紀要 32 63-69 2010年3月
症例は55歳男性。15年前より関節症性乾癬に対して治療を受けておりコントロール良好であった。2007年2月に自己判断にて治療薬を中止したところ,皮膚および関節症状が再燃し,著しい疼痛により離床不能となり臀部に褥創を形成するに至った。シクロスポリンA,経口プレドニゾロンによる治療を行ったが効果不充分であり副作用を認めた。血清β-D-glucanの上昇を認め,本邦の生物学的製剤の使用ガイドラインに基づけばインフリキシマブの適応外となるが,臨床所見や他の検査によって活動性の真菌感染症は否定的であったことから同意取得後にインフリキシマブを開始した。結果,皮膚および関節症状は著明に改善し,真菌感染症を発症することなく血清β-D-glucanは正常化した。現在,インフリキシマブを継続して通常の生活を送ることができている。ガイドラインは一つの指針に過ぎず,重要なことは患者の全体像を臨床的に判断することである。