松岡 裕之, 山本 大介, 早川 枝李, 諏合 輝子, 佐野 元市郎, 平井 誠, 吉田 栄人
自治医科大学紀要 34 117-128 2012年3月 査読有り
自治医科大学医動物学部門で4年間(2007-2010)に照会を受けた,寄生虫・衛生動物関連症例について検討を行なった。照会総件数は95件で,学内から34件(35.8%),学外から61件(64.2%)であった。うち実際に寄生虫の感染があった症例は27件であった。頻度の高かった疾患は,日本海裂頭条虫症13例,マラリア4例などであった。過去に照会数が多かった回虫症の照会は1例もなかった。いままで日本国内での存在が認識されていなかったアジア条虫症を2例経験した。衛生動物関連症例は9件あった。マダニ咬傷,ハエウジ症のほか,我が国で増加傾向にあるトコジラミ咬傷を経験した。また砂漠に生息するスナノミに寄生された症例の照会を受けた。新生児の溶血性貧血またはマラリアの治療に関連してglucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD)活性検査の依頼が34件寄せられた。新生児に強い黄疸が生じ母親が外国人である場合,G6PD欠損症を疑って本酵素の活性を検査するべきである。 本症は日本でこそ稀だが,世界的には最も高頻度にみられる遺伝子病だからである。