小林亮子, 西多昌規, 安田学, 齋藤慎之介, 小林聡幸, 加藤敏
臨床精神医学 44(8) 1129-1134 2015年 査読有り
本邦の摂食障害の患者は1980年からの20年間に約10倍増加したが, 治療スタイルは20年間ほぼ変化がなく, 身体的視点も包括した総合的な治療スタイルの構築が喫緊の課題である. 摂食障害の中核群である神経性やせ症(anorexia nervosa)は, 不食を徹底する摂食制限型とむちゃ食いと過剰な排出行為を繰り返して低体重を維持する過食・排出型の2つの亜型がある. いずれも肥満恐怖やボディイメージの歪曲を伴う体重への過度のこだわりが主症状である. 摂食障害の治療上の課題として頑固な不食や過食・嘔吐があるが, 睡眠覚醒リズムの障害およびやせ目的の執拗な過活動も隠れた治療課題である. 今回わたしたちは, 昼夜を通して1日の活動量や睡眠状態を長期間にわたって自動的に記録できる活動量計を導入し, 一定の成果を得た2症例を報告する. 摂食障害患者に活動量計を装着させ, 患者の日中活動量や睡眠状況を測定した. そして定期的に患者に行動量や睡眠状態, 消費カロリーのデータをフィードバックした. その結果, 不眠の自己認知や過活動の抑制に関して治療上有効な知見が得られた. 活動量計は摂食障害患者にとって, 単に身体的・生理的なデータの記録にとどまらず, 認知行動療法的アプローチにも寄与する可能性があることが示唆された.