平嶋勇希, 細谷好則, 俵藤正信, 太田真, 瑞木亨, 荒井渉, 横山卓, 西野宏, 安田是和, 永井秀雄
Prog Dig Endosc 69(2) 56-57 2006年12月5日
37歳男。統合失調症で入院治療中であった。発熱と食欲不振が出現し、胸部X線で有鉤義歯を認めた。有鉤義歯は長軸7cmで、鋭いクラスプを有していた。CTでは胸部上部から中部にかけて義歯と穿孔を認め、食道周囲の空胞は下縦隔までみられた。下行大動脈周囲には液体貯留を伴っていた。上部消化管内視鏡を施行し、有鉤義歯を鉗子で把持したが、回転や移動は不可能で、刺入による潰瘍穿孔部を認めた。硬性鏡による義歯の解体・破壊や回転も不可能で、強力に牽引した場合の大出血や穿孔部開大の危険性を考慮し、開胸術に移行した。暗赤色に腫大した食道壁を認め、潰瘍穿孔部を長軸方向にやや延長切開して義歯を摘出し、縫合した。開腹を追加して経食道裂孔的に胸腔内へ大網を導き、縦隔に大網を充填した。術直後の消化管減圧と周術期の栄養管理目的に胃瘻を造設した。術後肺炎を併発したが改善し、手術部位は問題なく治癒して31日目に転院した。