佐藤 一也, 室井 一男, 岡 智子, 笹崎 美幸, 細沼 里江, 尾崎 勝俊, 藤原 慎一郎, 翁 家国, 松山 智洋, 大嶺 謙, 鈴木 隆浩, 森 政樹, 永井 正, 小澤 敬也
自治医科大学紀要 34 149-157 2012年3月1日
間葉系幹細胞(MSC)は,免疫抑制効果を有し造血幹細胞移植後の重症移植片対宿主病(GVHD)を改善すると報告されている。我々は,ステロイド抵抗性GVHDに対し,ヒトMSCを投与する臨床研究を実施した。2006年1月から2010年12月にかけて10例(男性7例,女性3例),平均年齢37.9歳(23歳から65歳まで)のステロイド抵抗性GVHDを有する患者が本試験に参加した。MSCは,患者の血縁者の骨髄血から分離された。10例中3例でMSCが投与された。他の7例では,大量のメチルプレドニゾロンを含む他の免疫抑制剤の追加よってGVHD が改善した,GVHDが自然に軽快した,または早期死亡のためMSCは投与されなかった。MSCを投与された3例のうち,1例で消化管GVHDの改善を認め,他の1例では消化管GVHDの改善なく,他の1例では消化管GVHDの増悪なくプレドニゾロンの減量が可能であった。MSCの投与に関係した急性の副作用はみられなかった。今回の臨床研究は少数例での検討であるため,ステロイド抵抗性GVHDに対するMSCの有効性を評価するのは困難である。ステロイド抵抗性GVHDに対するヒトMSCの臨床効果を確立するため,更なる臨床試験が必要である。