今津 愛介, 藤本 茂, 熊本 将也, 大崎 正登, 金沢 信, 田川 直樹, 大屋 祐一郎
脳卒中 38(6) 407-412 2016年11月
症例1は77歳の女性。糖尿病の既往があり、某日起床時に右上下肢の脱力を自覚し、翌日も症状が持続したため当科に入院となった。症例2は66歳男性。某日起床時から急激な浮腫の進行と歩行障害、呂律不良を主訴に来院され入院となり、入院3日目に右片麻痺と右上下肢の感覚障害を指摘された。両症例ともにネフローゼ症候群の診断基準を満たし、MRI拡散強調画像で両側散在性の急性期梗塞巣を認めた。症例1では両側椎骨動脈狭窄を認めた。共に心房細動は伴わず、経食道心エコーで左房内もやもやエコーと大動脈弓部粥腫病変を認めた。ネフローゼ症候群に伴う過凝固状態が動脈硬化病変や心臓内の血栓形成に関与した可能性が考えられ、抗凝固療法を継続した。ネフローゼ症候群では左房内もやもやエコーや弓部粥腫を高頻度に有している可能性が推察され、脳塞栓症の原因診断に経食道心エコーが有用であると考えられた。(著者抄録)