小野 倫子, 谷口 信行, 鯉渕 晴美, 藤井 康友, 尾本 きよか, 中村 みちる, 伊東 紘一
Journal of medical ultrasonics = 超音波医学 30(4) J555-J560 2003年7月15日
症例1(39歳女).Subcutaneous panniculitic T-cell lymphomaのためプレドニゾロン,シクロスポリンを服用していた.右上肺野に浸潤影を指摘され,さらに右膝窩部および背部に腫瘤が出現し増大してきた.超音波検査で左背部腫瘤は境界明瞭な低エコー腫瘤として認められた.右大腿,両側下腿の筋層内にも背部と同様なパターンを示す腫瘤が多発していた.背部腫瘤の膿汁・喀痰・血液培養からNocardia farcinicaが検出され,胸部所見から肺ノカルジア症の筋層内および肺内への血行性播種と考えられた.パニペネム・ベタミプロン治療でCRPおよび胸部異常陰影は速やかに改善した.症例2(67歳男).類天疱瘡の再発でプレドニンとdouble filtration plasmapheressis療法を併用していた.右上腕,項部,背部,臀部に表面平滑で軟らかい皮下腫瘤が出現し,次第に増大してきた.左臀部腫瘤の生検を行い,Nocardia asteroidesが検出されたため,多発性ノカルジア膿瘍と診断した.ミノサイクリンおよびジアフェニルスルフォンの経口投与を開始した.超音波検査で腫瘤の大きさは変わらないが,内部に隔壁が生じていた.さらにアミカシンを併用したところ,腫瘤は触知しなくなり,胸部異常陰影は消失した