方山 真朱, 熊澤 淳史, 大江 恭司, 田澤 直樹, 李 夏暎, 伊藤 史生, 糟谷 美有紀, 伊良部 徳次
日本集中治療医学会雑誌 18(2) 227-231 2011年4月1日 査読有り
ジスチグミン臭化物10 mg/dayを1年間にわたり内服し,3ヶ月以上続く難治性の下痢や嘔吐など消化器症状のため入院したが,ジスチグミン臭化物中毒によるコリン作動性クリーゼを発症し,救命し得なかった一症例を経験した。背景に肝硬変があり,慢性的にコリンエステラーゼ値が低値であったため,ジスチグミン臭化物中毒の診断に時間がかかった。コリンエステラーゼ残存率は約7ヶ月前から異常低値であり,難治性の消化器症状が出現した時期と合わせて慢性中毒と考えた。難治性の消化器症状およびコリンエステラーゼ値が異常低値を示す高齢者では,ジスチグミン臭化物の中毒を疑い,早期から集中治療の対象とするのが望ましい。