古屋武史, 井上幹也, 南郷容子, 金田英秀, 大橋研介, 杉藤公信, 池田太郎, 越永従道
日本小児外科学会雑誌 48(4) 759-765-765 2012年6月20日 査読有り
症例は3歳女児.1歳時に十二指腸球部後壁に潰瘍を認め,内服加療にて症状改善し,外来にて経過観察となった.3歳時に腹痛が再燃し,初回時と同部位に潰瘍認め,同時に急性膵炎の所見も認めた.血清ガストリン値は2,800pg/mLと高値を示した.CT・MRI検査にて膵頭部前方に嚢胞性腫瘤を認め,^<99m>Tc-pertechnetateシンチグラフィにて同部位に集積を認めたために十二指腸重複症の診断にて手術を施行した.十二指腸球部と膵臓との間に4cmの球状の腫瘤を認め,腫瘤の前壁は全層切除し,十二指腸との共通壁は腫瘤側の粘膜切除を施行した.病理組織診断では十二指腸粘膜を認め,異所性胃粘膜と膵組織を認めた.さらに重複腸管粘膜上皮にガストリン陽性細胞を認めた.血清ガストリン値は術翌日に正常値となった.本症例のように十二指腸潰瘍の症状が先行して認められた報告例は少なく,高ガストリン血症を伴った報告例は無い.