富田 凉一, 福澤 正洋, 池田 太郎, 越永 従道, 藤崎 滋, 丹正 勝久
日本消化器外科学会雑誌 34(5) 465-469 2001年5月1日
潰瘍性大腸炎と大腸腺腫症の5症例(男性3例, 女性2例, 10〜15歳, 平均13.0歳)についてJ型回腸嚢肛門吻合術後soilingの病態解明を目的に, 回腸瘻閉鎖術後1年目(A群)と2年目(B群)における陰部神経伝導時間について, 対照16症例(C群 : 男性10例, 女性6例, 12〜18歳, 平均15.4歳)を用いて比較検討した. その結果, 右側ではA群2.85±0.72ms, B群1.78±0.37ms, C群1.76±0.32msであり, A群がB, C群より有意に延長していた(p<0.01). 左側ではA群2.95±0.25ms, B群1.86±0.31ms, C群1.84±0.41msであり, A群がB, C群より有意に延長していた(p<0.01). すなわち, 左右両側において, A群がB, C群より明かに伝導時間の延長を示した. よって, 術後1年目までのsoilingの原因として, 陰部神経への手術操作による損傷が考えられ, 2年目ではその機能が改善し, soilingは治癒するものと思われた.