上原 秀一郎, 福澤 正洋, 杉浦 浩朗, 池田 太郎, 阿蘇 大輔, 萩原 紀嗣, 野中 倫明, 越永 従道
日本外科系連合学会誌 25(2) 181-185 2000年4月30日
患者は8歳, 男児。臍周囲痛, 嘔吐を主訴に近医受診し, イレウスの診断にて当科紹介入院。腹部理学所見では腹部膨隆, 臍周囲に圧痛を認めた。腹部単純レントゲンでは小腸拡張, ニボー像を認め, 小腸イレウスと診断。イレウス管を挿入後, 造影を行うと, 下部小腸に約10cmにわたり, 壁外性の圧排を認め, 腹部超音波検査でも隔壁を伴う10cm大の低エコー域を認めた。腸間膜嚢胞の診断下, 手術施行。腹腔鏡にて腹腔内を観察すると, 下部小腸周囲に2cmから10cm大の淡褐色, 黄白色調の嚢胞性病変を認め, その周囲の小腸が包含されていた。下腹部小切開にて開腹し, 一部小腸を含め, 嚢胞摘出術を施行した。病理組織診断は腸間膜及び小腸リンパ管腫であった。小腸リンパ管腫は本邦では27例が報告されているに過ぎない稀な疾患で, 小児では自験例を含めて2例のみであり, 本症例はさらに腸間膜嚢胞に伴っていたので報告する。