冨樫 一智, 小西 文雄, 櫻木 雅子, 堀江 久永, 鯉沼 広治, 河村 裕, 岡田 真樹, 永井 秀雄
日本大腸肛門病学会雑誌 55(10) 873-877 2002年10月1日
内視鏡切除の対象となる大腸sm癌は,明らかな脈管浸潤がないこと,癌先進部も含めて低分化腺癌でないこと,1,000μmを越える癌浸潤がないこと,のすべてを満たす必要がある.大腸sm癌の内視鏡切除後における追加腸管切除の適応基準としては,癌浸潤距離を1,000μm程度まで引き上げることが可能と考えられ,リンパ管侵襲の判定基準を厳格にすることによっても追加腸管切除例を安全に減らすことも可能と考えられた.従来は内視鏡切除の対象とは考えられなかったsm癌に対する適応拡大を図るためには,リンパ節転移のない大腸sm癌を的確に診断することが必要で,明らかな脈管侵襲や癌先進部の低分化腺癌は内視鏡切除前に診断することは困難であるため,1,000μm以下の癌浸潤を示すsm癌を鑑別する内視鏡診断学の確立が急務である.著者の検討では,表面凹凸不整像や出血の内視鏡所見から鑑別可能であった.