<臨床経験に立脚した、社会の問題を解決するエビデンスの構築と、シミュレータ開発および学習法の開発>
1. 地域医療の経験を背景にし、内科学一般とくに消化器内科学を研究の基盤としています。医学博士は「東日本大震災後の消化性潰瘍の増加とその特徴」に関する臨床研究で取得し、精神的ストレスは、消化性潰瘍の独立した成因であり、災害時潰瘍出血の危険因子となることを報告しました。現在も臨床の課題を克服すべく、コホートを含む臨床研究とCochrane Review memberとしてシステマティックレビューを行っており、エビデンスの実臨床への還元を目指しています。2019年7月よりCochrane Upper GI and Pancreatic diseases(その後Cochrane Gutに名称変更)のEditorとなりました。COVID-19状況下の意思決定支援として、Paul Moayyedi教授の指導下で、免疫不全者や小児におけるワクチン接種の効果に関してのエビデンス集積を行いました。(COVID-END: COVID-19 Evidence Network to support Decision-making in Canada)。
東日本大震災時の出血性潰瘍増加をきっかけとして、出血を伴う観血的内視鏡処置の学習環境の課題を明らかとし、そこから新規シミュレータ開発とそれらを用いた問題解決型シミュレーション教育の推進をしています。
医学教育学会主催の第43回富士研WSにも参加し、医学教育の基本とこれからの在り方に関して学んでおり、2023年4月から自治医科大学医学教育センター医療人キャリア教育開発部門を担当し、卒前卒後をつなぐキャリア教育を模索しています。また2.と関連して災害の経験を通した医療者としてのプロフェッショナリズムに関する講義を継続的に行っております。
<災害時の経験と人脈をきっかけに、領域横断的な災害医療人材の育成>
2. 2008年岩手宮城内陸地震(M7.2)では震源地に近接する栗原中央病院での急性期トリアージと初期治療そしてDMAT受け入れを経験しました。また2011年東日本大震災(M9.0)では、南三陸町公立志津川病院で勤務医として15mを超える地震津波災害に被災、患者・住民避難とその後の災害医療体制構築に関わりTIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選出されました。以降、災害医療領域の中でこれまで重視されてこなかった支援を受け止める「受援」の在り方を提言しています。さらに、被災した人間として困難に向き合うレジリエントな社会を目指し、国内外で経験と知見を共有する講演活動・いのちの教育を継続しています。2024年現在で講演はのべ250回を超え、2万3千人超の聴講者へメッセージを伝えています。
2019年10月より文部科学省補助金事業(平成30年度選定)「課題解決型高度医療人材養成プログラム」"コンダクター型災害保健医療人材の養成プログラム"の運営業務に携わり、社会に提案できる医療人材育成を進めています。2024年1月の能登半島地震においても自治医科大学同窓会支援チームの立ち上げおよび事務局を担当し受援体制構築と被災地内医療機関の疲弊を防ぐ取り組みを主導しました。
<クロスアポイントメントを用いた大学×大学連携/臨床×教育連携>
3. 文部科学省が推進するクロスアポイントメント制度の事例として、2023年4月より東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野でのシミュレータ研究開発を准教授として継続しつつ、自治医科大学医学教育センター医療人キャリア教育開発部門の特命教授として両方常勤職を務め、領域横断的かつ大学横断的な活動を実践すべく取り組んでいます。どちらの所属においても周囲の理解と協力の下でいくつものプロジェクトを進めていますので、研究力や医工連携に強い東北大学と、臨床と医療人教育に強みのある自治医科大学の連携構築としても発展できるよう努めています。
産学連携で開発しているシミュレータ Medical Rising STAR シリーズ(動画)https://www.youtube.com/playlist?list=PLYyDSR_h1X0yyqqgRpVUd6erdvJKoXqIA
<リンク先:シミュレータ開発におけるプレスリリース記事>
侵襲的内視鏡手技シミュレータの社会実装 デンカと東北大学の産学連携「Medical Rising STAR®」プロジェクト
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/04/press20230425-01-denka.html
出血合併症の再現を含む 胆膵内視鏡シミュレータモデルを開発 産学連携「Medical Rising STAR」プロジェクト第2弾
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/02/press20240219-02-mrs.html
<リンク先:TEDxTaipei 2014講演 被災とレジリエンスについて>
http://tedxtaipei.com/talks/2014-takeshi-kanno/
※メディア関連出演の記録は社会貢献活動欄の末尾に、東北大学医学部広報一條様のご助力で一覧を作成し掲載しています。
<リンク先:コンダクター型災害保健医療人材の養成プログラム>
https://www.dcnd.hosp.tohoku.ac.jp/