松本 健司, 井上 賢之, 坂口 美織, 森 和亮, 鯉沼 広治, 堀江 久永, アラン K.・レフォー, 北山 丈二, 佐田 尚宏
日本外科系連合学会誌 2018年12月 日本外科系連合学会
症例は48歳,女性.数日前からの血便を主訴に当院を受診した.腹部造影CTでは,腹腔内に腹水貯留やfree airは認められなかった.両側の卵巣には嚢胞成分を含む腫瘤性病変を認め,特に右卵巣は内部に高吸収域を有し直腸に近接していた.卵巣腫瘍による直腸浸潤もしくは直腸腫瘍による卵巣浸潤が疑われ,精査目的に同日緊急入院となった.下部消化管内視鏡を施行したところ,直腸Raに毛髪が付着した腫瘤が穿通している所見を認めた.卵巣奇形腫の直腸穿通が疑われたが腹膜炎所見を認めなかったため,待機的手術の方針とした.良悪性の鑑別が困難であったため,術中迅速病理所見により切除範囲を検討する方針とし,入院第9日目に手術を施行した.術中所見では両側の卵巣・直腸・子宮が一塊となっており両側附属器切除術・低位前方切除術・子宮全摘術を施行した.迅速病理では卵巣成熟嚢胞性奇形腫の診断であり,リンパ節郭清は行わず,手術終了とした.経過良好で術後10日目に退院となった.卵巣成熟嚢胞性奇形腫による消化管穿通例の報告は比較的稀である.良性症例だけでなく悪性症例も存在し,手術対応が異なるため,正確な術前術中診断が必要である.(著者抄録)