増田 貴博, 雨宮 守正, 大友 貴史, 森下 義幸, 鶴岡 秀一, 武藤 重明, 永江 玄太, 稲森 英明, 磯田 憲夫, 井戸 健一, 菅野 健太郎, 浅野 泰, 草野 英二
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy 37(9) 1809-1813 2004年9月28日
症例は64歳女性, 肝硬変, IgA腎症による保存期腎不全のため通院中であった. 2002年11月肝性脳症のため入院となり, 分枝鎖アミノ酸製剤を投与したところ, 18日目に意識障害, 頻呼吸が出現し, 高Cl性代謝性アシドーシスと高アンモニア血症を認めた. 炭酸水素ナトリウムを投与したが症状悪化したため, 血液濾過透析を1回施行した. 直後より臨床症状とアシドーシス, 高アンモニア血症の著明な改善を認めた.<br>血液濾過透析により, アシドーシスや高アンモニア血症が是正され, 肝性脳症の起因物質の一つとされるphenylalanineが除去されて意識レベルが回復したと考えられた.<br>腎機能低下患者では分枝鎖アミノ酸製剤投与でアシドーシスや高アンモニア血症をきたすことがあるが, 多くは投与中止と炭酸水素ナトリウム投与のみで改善する. しかし, 本症例のように, 1) 高度のアシドーシス・高アンモニア血症をきたしそれに伴う症状が強い場合, 2) 内科的治療 (主に炭酸水素ナトリウム) に対する反応が不十分な場合, などでは血液濾過透析が選択肢の一つであると考えられた.