基本情報
論文
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The American journal of case reports 25 e943876 2024年7月23日BACKGROUND Inferior vena cava (IVC) injury is a potentially fatal injury with a high mortality rate of 34-70%. In cases in which the patient's condition is stable, diagnosis by computed tomography (CT) is the criterion standard. Findings on CT include retroperitoneal hematoma around the IVC, extravasation of contrast medium, and abnormal morphology of the IVC. We report a case of an IVC injury that could not be diagnosed by preoperative CT examination and could not be immediately detected during laparotomy. CASE REPORT A 73-year-old woman had stabbed herself in the neck and abdomen at home using a knife. When she arrived at our hospital, we found a stab wound several centimeters long on her abdomen and a cut approximately 15 cm long on her neck. We activated the massive transfusion protocol because she was in a condition of hemorrhagic shock. After blood transfusion and blood pressure stabilization, contrast-enhanced computed tomography (CT) revealed a small amount of fluid in the abdominal cavity. An otorhinolaryngologist performed successful drainage and hemostasis, and a laparotomy was performed. Gastric injury and mesentery injury of the transverse colon were identified and repaired with sutures. Subsequent search of the retroperitoneum revealed massive bleeding from an injury to the inferior vena cava (IVC). The IVC was repaired. Postoperative progress was good, and she was discharged from the hospital 65 days after her injuries. CONCLUSIONS We experienced a case of penetrating IVC injury, which is a rare trauma. Occult IVC injury may escape detection by preoperative CT examination or during laparotomy.
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日本腹部救急医学会雑誌 44(4) 639-642 2024年5月症例は79歳,男性。自転車走行中,ダンプカーに衝突されて受傷した。精査の結果,両側多発肋骨骨折,両側外傷性血気胸,両側肺挫傷,外傷性くも膜下出血,肝損傷,右腎損傷,多発胸腰椎骨折の診断となったが,いずれも保存的加療で改善した。また左横隔膜にBochdalek孔ヘルニアも指摘されたが,先天性か外傷による後天性かの判別は困難であった。Bochdalek孔ヘルニアは手術も考慮したが,過去症例および本人との協議により,内容物が後腹膜脂肪のみのため,症状増悪に注意しつつ経過観察とした。その後1年を経過しても絞扼を疑う症状の出現は認めていない。Bochdalek孔ヘルニアは新生児に多い疾患であるが,成人発症例も報告されている。報告された成人症例の多くは手術されており,保存的に長期間経過観察し得た症例は非常に少ない。受傷機転,症状,内容物を考慮したうえで保存加療とすることも選択肢になり得ると考えられた。(著者抄録)
MISC
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日本腹部救急医学会雑誌 42(3) 409-412 2022年3月31日症例は74 歳,女性。虫垂炎による腹部手術歴あり。腹痛を主訴に受診され,CT で子宮の左外側で小腸のcaliber change を認めた。腸管壁の造影効果は保たれていた。癒着性腸閉塞と子宮広間膜裂孔ヘルニアを鑑別にあげ,イレウス管による保存的治療を行った。減圧は良好であったが,通過障害が改善しなかったため腹腔鏡下手術を行った。子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断し,子宮広間膜の一部を開放して小腸の嵌頓を解除した。腸管の虚血は認めなかった。ヘルニア門は縫合閉鎖した。術後経過は良好で術後6 日目に退院した。術後約1 年再発を認めていない。子宮広間膜裂孔ヘルニアは内ヘルニアのなかでまれな疾患である。ヘルニアの原因となる子宮広間膜裂孔の処理について,過去の報告では開放例と閉鎖例があるが,年齢やヘルニア門の大きさ,子宮広間膜組織の脆弱化などを確認したうえで閉鎖するか開放するかを選択するべきであると考えられた。
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日本腹部救急医学会雑誌 42(1) 73-76 2022年1月31日症例は54 歳,男性。小児期に詳細不明の下腹部手術歴あり。嘔吐を主訴に受診され,精査のCT で盲腸外側で小腸のcaliber change を認めた。腸管壁の造影効果は保たれていた。癒着性腸閉塞と盲腸周囲ヘルニアを鑑別にあげ,イレウス管による保存的治療を行った。減圧は良好であったが,通過障害が改善しなかったため腹腔鏡下手術を行った。外側型盲腸周囲ヘルニアと診断し,ヘルニア門を開放して小腸の嵌頓を解除した。腸管の虚血は認めなかった。術後経過は良好で術後4 日目に退院した。術後約1 年4 ヵ月の現在,再発を認めていない。腹腔鏡下手術は,十分な減圧のもとで腹腔内を詳細に観察可能であり,本症例のように癒着性腸閉塞と内ヘルニアとの鑑別が困難で術前に確定診断できない症例にはとくに有用である。今回われわれは腹腔鏡下に診断,治療し得た外側型盲腸周囲ヘルニアの1 例を経験したので報告する。
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日本臨床救急医学会雑誌 24(4) 583-587 2021年8月31日35歳,男性。約3mの屋根から墜落し,4×4×80(cm)のアルミ角材が右側腹部に刺入した。呼吸循環動態は安定していたが,創部から持続的な出血を認めた。角材が大きく術前にCT施行できず,やむを得ず単純撮影の情報のみで緊急手術とした。腹部正中切開で開腹したところ,腹壁貫通創と外側区域の肝損傷(日本外傷学会分類Ⅱ型)を認めた。止血は得られていたので腹腔内の観察・洗浄と刺入部の縫合のみ行い腹部開放管理,翌日に止血を確認後閉腹,経過良好で第11日病日退院とした。杙創は高所墜落や転倒による殿部への体幹垂直方向の受傷が多く,体幹側方からは少数である。刺入物を抜去せず搬送されることが多く,その大きさや性状によりCT撮影が困難もしくは不可能な場合がある。体幹側方の場合はその可能性が高まる。手術には万全の体制で臨むとともに,平時より外傷手術のシミュレーションなどを活用して緊急開腹手術のトレーニングや研修を積む重要性を再認識した。
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日本臨床救急医学会雑誌 23(1) 58-61 2020年2月29日75歳,男性。ハチ酒造りを趣味とし,これまで多数回のハチ刺傷歴があるが症状を呈したことはなかった。某日スズメバチに両肩を2カ所刺傷された後,意識消失した。血圧低下・頻呼吸・全身の膨疹を認め,アナフィラキシーショックとしてアドレナリンを筋注され当院に搬送となった。病着したとき,呼吸・循環動態は安定していたため,経過観察を目的に入院し翌日に退院した。ハチ刺傷によりアナフィラキシーショックをきたすことはよく知られ,通常は2度目以降の刺傷により発症率が増加すると思われる。一方で複数回の刺傷において無症状であればその危険性は低下していると考えられやすい。しかし本症例は多数回の刺傷歴があるものの無症状で経過し,今回に限りアナフィラキシーを発症した。残念ながらその機序を説明する所見を得ることはできなかったが,このような症例が存在することの重要性に鑑みここに報告する。
共同研究・競争的資金等の研究課題
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2022年4月 - 2025年3月