伊澤 祥光, 田村 明彦, 大関 美穂, 松田 純一, 赤松 秀敏, 松井 淳一
日本臨床外科学会雑誌 64(9) 2203-2206 2003年9月 査読有り
65歳女.右下腹部痛と発熱が出現し,近医にて投薬を受けるも改善しなかった.入院時,39.5℃,右下腹部に軽度圧痛を認め,WBC,CRP,LDH軽度上昇と軽度貧血を認め,急性虫垂炎と診断した.腹部所見は軽度であり,症状は保存的治療にて一旦軽快したが,経口摂取開始後に再燃した.腹部ヘリカルCTでは盲腸を中心に造影効果が強く,その内側に虫垂と思われる管腔構造を認め,白血球数も上昇したため,手術を行った.虫垂根部は炎症が強く,盲腸壁は硬く腫瘤状であり,悪性疾患も疑い回盲部切除術を施行した.術後,腹部症状は改善したが,白血球数は漸増して異常高値を示し,末梢血中に芽球を認め,病理組織には虫垂壁全体から盲腸壁まで白血病細胞のび漫性浸潤像を認めた.骨髄生検により急性骨髄性白血病M2と確定診断し,転院して化学療法が行われ寛解した.本例は虫垂根部に白血病細胞浸潤による閉塞機転が生じ急性虫垂炎を惹起したと推測された