佐藤 健夫, 萩原 清文, 松野 博明, 秋山 修
アレルギー 54(10) 1208-1212 2005年10月30日
症例は気管支喘息とアレルギー性鼻炎の既往がある92歳男性.経過中にメチシリン耐性ブドウ球菌・多剤耐性腸球菌による敗血症を繰り返したため抗生剤を投与した.抗生剤投与中に皮疹・肝障害・末梢血液中好酸球数増加が出現し, その経過に一致して心不全による呼吸困難感および胸水貯留, 心電図異常, び漫性心筋収縮能低下が出現した.抗生剤中止とステロイド剤投与により, 皮疹・肝障害・末梢血液中好酸球増多は改善, それに伴い心不全も軽快した.治療経過より好酸球増多は塩酸バンコマイシンもしくはテイコプラニンによる薬剤性を疑った.薬剤性好酸球増多症による心筋障害は稀であるが, 生命予後を左右する重大な合併症の一つである.本例は抗生剤投与中止とステロイド剤投与により治療し得た.