辻 美隆, 藤岡 正志, 加藤 高晴, 茅野 秀一, 細川 勝正, 原田 雅義
手術 57(9) 1031-1035 2003年8月
62歳,男.黄疸,心窩部不快感を主訴とした.画像所見等により,膵頭部領域癌(下部胆管癌疑い)と診断し,手術を施行した.病理組織所見で,粘液を含む高円柱上皮がpapillaryに増殖し,管腔がcysticに拡張しており,moderate dysplasiaに相当する膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)と診断された.P53染色は陰性であった.術後は順調に経過した..ERCP,MRCPで総胆管の拡張と膵内胆管の狭窄所見を認めたが,主膵管に異常所見を認めず,超音波検査,CTでも膵管拡張等の特徴的所見が認められなかったため,IPMTの術前診断は得られなかった.自験例のように,黄疸をきたし,下部胆管癌に近似した膵管胆管合流部付近の分枝拡張型IPMTの存在を念頭に置く必要がある