笹沼 秀幸, 竹下 克志
整形外科学レビュー 2023-'24 90-96 2023年4月
<最近の研究動向とガイドライン>●腱板断裂(rotator cuff tear:RCT)の診断はMRIがゴールドスタンダードである.エコーは動態変化を描出しながら治療が行える点が有用で,上腕二頭筋腱長頭腱(long head biceps tendon:LHBT)病変の評価にも使用される.エラストグラフィーによる筋硬度評価が新しいサロゲートマーカーになる可能性がある.●部分断裂に対する多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)治療は,強力価ステロイド注射に劣らない臨床効果が期待できるかもしれない.コストの問題はあるが,有害事象が少なく,糖尿病合併患者にも使用できる利点がある.●腱板修復術(rotator cuff repair:RCR)を行う際に,術前評価として患者のメンタルヘルス,喫煙歴と疾病利得に関しては把握しておくべきである.●修復不能な広範囲RCTに対する上方関節包再建術(superior capsular reconstruction:SCR)の報告が急増している.今後,詳細な手術適応,グラフト選択,他の術式との比較研究が報告されるだろう.●リバース型人工肩関節置換術(reverse shoulder arthroplasty:RSA)は65歳以上の広範囲RCTと腱板断裂性変形性肩関節症に対する有効な治療法である.日本整形外科学会の「RSA適正使用基準」に準じて使用することになるが,最後の手段であることを強調したい.(著者抄録)