荒井 渉, 細谷 好則, 斎藤 心, 平嶋 勇希, 横山 卓, 俵藤 正信, 安田 是和, 永井 秀雄, 西野 宏
栃木県医学会々誌 33 178-181 2003年10月
頭頸部癌に重複した食道表在癌治療経験を報告した.対象は,1992年〜2003年5月までに治療した8例(全例男性,平均59歳)であった.頭頸部癌は下咽頭癌4例,喉頭癌2例,甲状腺癌,舌癌各1例で,甲状腺乳頭癌を除き全てが扁平上皮癌であった.治療は放射線照射を主体とした集学的治療を施行した.表在癌発見の契機は頭頸部癌治療前のスクリーニング時が5例,頭頸部癌治療後の定期検査による内視鏡検査が2例,表在癌治療後の下咽頭癌発見が1例であった.占拠部位はMtが4例,Ltが2例,UtとCeが各1例で,深達度はsmが2例,m3が2例,m2以下が4例であった.治療は内視鏡的粘膜切除術が4例,根治術が2例,放射線治療が2例であった.転帰は2例に下咽頭癌死を認めたが,表在癌による死亡はなかった.なお,頭頸部癌(喉頭癌)に重複した進行食道癌7例では,頭頸部癌治療後3年以上経過してからの発見(6例)で,原病死5例と極めて予後不良であった