小林 晃, 坂東 政司, 石井 芳樹, 杉山 幸比古, 北村 諭
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 21(4) 308-311 1999年5月25日
胸膜転移をきたした悪性黒色腫の1例を経験した。症例は64歳, 女性。右背部上方の悪性黒色腫(stage I a)に対し, 手術および化学療法を施行した。10年後, 皮膚・肝に再発を認めたため, 再度, 化学療法を施行したが, その14ヵ月後, 右胸痛, 咳嗽および労作時呼吸困難が出現し, 胸部X線写真にて大量の胸水貯留を認めた。また, 胸部CT写真で左S^3, S^4, S^8の3ヵ所にそれぞれ結節を認めた。胸水のコントロールを目的に胸腔ドレーンを挿入する際に局所麻酔下胸腔鏡検査を施行し, 小豆様の黒色隆起性病変を臓側および壁側胸膜に散在性に多数認めた。同部位からの直視下生検にて悪性黒色腫の胸膜転移との確定診断を得た。原因不明の胸水貯留例に対する局所麻酔下胸腔鏡は胸腔内病変の詳細な観察および直視下生検による病理組織学的診断率の向上が期待できる, 安全かつ有用な検査法である。