野田 昌生, 杉本 寿史, 伊藤 真人
ENTONI (276) 23-31 2022年10月
Auditory Neuropathy(AN)は感音難聴を呈するにもかかわらず,耳音響放射(OAE)などで測定する外有毛細胞の機能は正常で,聴性脳幹反応(ABR)では無反応となり,聴力に比して不良な語音明瞭度が特徴とされる疾患概念で,1996年に加我らが"auditory nerve disease"として,Starrらが"Auditory Neuropathy"として最初に報告した.それ以降,類似した臨床所見が集積し研究がすすむ中で,疾患の特徴や病態が報告されている.本稿ではAuditory Neuropathyまたはauditory neuropathy spectrum disorderの背景を述べつつ,海外におけるガイドラインと現況について解説を行った.Auditory Neuropathyは発症時期によって(1)小児や若年期と(2)成人期以降に発症するものに分けられ,それぞれ病態や臨床経過が異なり,それぞれの特徴を理解することで,臨床で出会った際にも,鑑別として挙げることができる.さらに,臨床上見逃さないためのポイントとして,問診,生理検査や画像検査,遺伝子検査について解説した.(著者抄録)