石川 暢夫, 佐久間 康成, 藤原 岳人, 宮本 直志, 貫井 昭徳, 安士 正裕, 八木澤 隆
自治医科大学紀要 31 31-40 2008年12月1日
わが国ではドナーの適応を拡大する一つの方法として,ABO血液型不適合生体腎移植が数多く実施されている。今回,自治医科大学附属病院におけるABO血液型不適合腎移植に対して臨床的検討を行った。 2003年4月から2007年12月までに当院で施行した生体腎移植54例中,ABO血液型不適合腎移植10例を対象(ABO不適合群)とし,同期間のABO血液型適合腎移植44例をコントロール群(ABO適合群)とした。 ABO不適合群では,移植前1週間より導入免疫抑制薬としてタクロリムス,ミコフェノール酸モフェチル,メチルプレドニゾロンの服用を開始,抗ドナー血液型抗体に対し全例移植前に血漿交換を施行。さらに全例脾摘を施行,バシリキシマブを術当日および術後4日目に投与した。 2008年3月までの成績は,ABO不適合群では生存率,生着率は各々90%,100%,ABO適合群では97.7%,97.7%であった。急性拒絶反応は,ABO不適合群2例(20%),ABO適合群12例(27.2%)に認めた。両群とも重篤な合併症は認めなかった。当院で施行したABO血液型不適合症例は,その移植成績(患者生存,移植腎生着),急性拒絶反応発生率等において,血液型適合症例と比較し同等であった。わが国の腎移植臨床登録集計報告(2006年実施症例)によれば923例中215例(23.3%)がABO血液型不適合症例であり,国内のドナーの現状からABO血液型不適合症例は今後も増加する傾向にあると考えられた。