石橋 尚弥, 田中 保平, 杉田 真穂, 山根 賢二郎, 由井 憲晶, 藤屋 将眞, 鷹栖 相崇, 古橋 柚莉, 渡邊 伸貴, 新庄 貴文, 伊澤 祥光, 松村 福広, 米川 力, 坪地 宏嘉, 間藤 卓
日本救急医学会関東地方会雑誌 44(2) 257-260 2023年3月31日
症例は54歳男性。仕事中に鉄パイプの下敷きになり受傷した。CT検査で, 鈍的外傷によると思われる左肺ヘルニア, 左多発肋骨骨折, 左血気胸, 左肺挫傷, 骨盤および左右大腿骨骨折, 左腰椎横突起骨折と診断した。胸部損傷に対して左胸腔ドレーンを挿入して経過をみた。大腿骨骨折と骨盤輪骨折に対して固定術を行い, 経過良好で入院50日目に転院した。肺ヘルニアは入院36日目のCT検査では還納されていたが, 受傷から約7カ月後のCT検査で再発していた。その後の治療方針について呼吸器外科とも協議し, 局所症状や呼吸器症状はないため, 患者に説明のうえで経過をみる方針となり, 受傷後約1年の現在まで無症状に経過している。外傷性肺ヘルニアは比較的まれな損傷形態で, 病態によっては脱出と還納を繰り返す可能性から治療方針に苦慮することがある。いまだ定石はないがリスク・ベネフィットを考慮して方針を決める必要があると考えられる。