照井 慶太, 吉田 英生, 松永 正訓, 幸地 克憲, 大塚 恭寛, 黒田 浩明, 菱木 知郎, 齋藤 武, 佐藤 嘉治, 大沼 直躬
日本小児外科学会雑誌 38(5) 782-786 2002年8月20日
成因が異なると考えられる限局性腸管拡張症(本症)の2例を経験した.症例1は6カ月, 男児である.胆汁性嘔吐を認め, 小腸狭窄の術前診断にて開腹した.空腸に限局性拡張を認め, 拡張腸管切除・端々吻合を施行した.拡張腸管の病理組織像は正常で, 拡張腸管の原因となるような所見は認められなかった.症例2は9歳, 男児である.間歇性の腹痛, 胆汁性嘔吐を認め, 緊急手術を施行した.回腸に限局性拡張を認め, 拡張腸管切除・端々吻合を施行した.拡張腸管は著明な筋層低形成を呈し, 中央部においては粘膜下層の外周がほとんど欠損している部分も見られた.腸管壁の菲薄化, 脆弱化が腸管拡張の原因と考えられた.本症の病因は不明だが, 1)筋層低形成, 2)胎生期の一時的な腸閉塞, 3)脊索の内胚葉からの分離障害, 等が成因論として考えられている.それぞれの説に合致する症例が存在するため, 本症の疾患概念の中には複数の病態が存在していると考えられた.