羽柴 淳, 堀越 琢郎, 窪田 吉紘, 高田 章代, 神戸 美千代, 照井 慶太, 吉田 英生, 宇野 隆
臨床放射線 64(7) 991-994 2019年6月
症例は3歳女児で、2日前から間欠的な下腹部痛を自覚し前医を受診した。腹部所見は非典型的であったが、腸重積を疑われ当院小児外科に搬送された。単純CTでは右下腹部に石灰化と脂肪を含有する腫瘤を認め、その尾側に軽度高濃度を示し、造影効果がはっきりとしない径37×23mmの構造を認めた。高濃度構造物の背側は渦巻き状の像が描出されていた。右卵巣静脈は脂肪を有する腫瘤の近傍を走行しており、左卵巣静脈は腫瘤と離れた部位で同定できなくなっていた。右卵巣成熟奇形腫に伴う卵巣茎捻転や卵管捻転、子宮捻転が鑑別に挙げられ、緊急手術が施行された。開腹後、直視下で左卵巣腫瘍を認め、子宮頸部を軸に3回転半子宮が捻転していた。左付属器と子宮は暗赤色に変色し、子宮と腟は索状物でつながっていた。右付属器は軽度のうっ血を認めるのみであった。子宮摘出術と左付属器切除術が施行された。CT画像にて軽度高濃度に観察された部分はうっ血・腫大した子宮であり、その背側の渦巻き状の所見は捻転した子宮頸部に相当すると考えられた。肉眼病理にて、子宮および左卵巣・卵管はうっ血および壊死に至っており、子宮捻転に合致すると考えられた。子宮頸部に相当する部分は索状化していた。左卵巣は成熟奇形腫と診断された。手術所見および病理組織所見ともに、明らかな左卵巣茎捻転や卵管捻転の所見は認めなかった。