齋藤 武, 菱木 知郎, 照井 慶太, 佐藤 嘉治, 中田 光政, 小松 秀吾, 八幡 江里子, 大野 幸恵, 松永 正訓, 黒田 浩明, 吉田 英生
日本腹部救急医学会雑誌 29(1) 39-45 2009年
虫垂炎を疑われ当科を受診した小児559例(男:女=323:236,1~16歳,中央値9歳)に対し超音波検査を行い,小児虫垂炎の鑑別・診断・病型分類におけるその有用性を検討した。虫垂炎症例は340例で,うち293例に手術を行った。虫垂炎診断におけるUS検査のsensitivityは94%,specificityは98%であり,negative appendectomyは4例(4/297, 1.3%)であった。初回USによるfalse negativeは20例でありいずれも重度の腸炎と診断された。粘膜下層のUS所見に基づいた病型分類と摘出虫垂の病理組織所見との一致率は,蜂巣炎性・壊疽性でおのおの83, 84%であった。小児虫垂炎の診断・治療に際し超音波検査は極めて有用である。施行に当たっては以下の点に十分留意する必要がある。(1)虫垂炎症例では,圧通の最強点とUSの虫垂同定部が一致し,圧迫しても虫垂の管腔が凹まない,(2)虫垂が回盲部に連絡することを確認し粘膜下層を全長にわたり観察する,(3)USで重度の腸炎と診断した症例でも,USを再検し,false negativeである可能性を念頭におく。当科では,諸検査にて虫垂炎の診断がつかない場合に限ってCT検査を行っている。