菅原 斉, 小野寺 壮吉
地域医学 6(1) 835-846 1992年1月 査読有り
観光シーズン中,北海道立ウトロ診療所の初診患者数はオフ・シーズンの1.6倍,時間外診療患者数は2.5倍,救急車出動件数は2.5倍であり,医師の深夜帯と休日の勤務時間はそれぞれ2.0倍,4.3倍に増加した.特に,外傷の初診患者数は4.3倍で,住民以外の時間外診療患者数,救急車出動件数もそれぞれ5.0倍,3.3倍となった.観光シーズン中に著増していたのは観光客と季節労働者である.そのうち外傷患者の特色についてみると,時間外受診者,救急車搬入例,他院への転送を要した例が多かった.また1人当たりの受傷部位の数や外傷の種類も多く,比較的重傷の比率が高いことがわかった.受傷の原因として交通事故とカムイワッカの滝のぼりがそれぞれ1, 2位を占めた.「リゾートヘルスケアシステム」とは,観光地・リゾート地の住民の「ヘルス」の維持,増進はいうに及ばず,そこに短期間滞在する観光客や季節労働者のプライマリケアに加えて,医療従事者やその家族の「ヘルス」をも確保し,「システム」として維持していこうとする考え方である