鷺原 規喜, 菅原 斉, 村山 淳子
診断と治療 92(8) 1440-1442 2004年8月 責任著者
80歳男.76歳,胃潰瘍の診断で,H.pyloriの除菌療法を他院で行った.この時の上部消化管内視鏡検査で,上部食道狭窄のため挿入が困難と指摘された.食欲低下を認め,上腹部痛,嘔気,嘔吐のため,入院となった.腹部超音波検査では,胃内に多量の残渣と左胸水を認めた.上部消化管内視鏡検査では門歯列より15cmの食道狭窄と,食道胃接合部口側の左側壁に直径1.5cmの食道破裂口,及び幽門狭窄を呈する3型胃癌を認めた.全身状態不良のため手術療法は選択できなかった.保存的治療により,状態が改善したため,食道破裂口の閉鎖を目的に,食道カバーステントを内視鏡的に挿入した.カバーステント留置後,嘔吐症状が再発することはなく,胸腔からの排液に血液は混じなくなっていた.CRPは減少傾向であったが,全身状態の悪化で第30病日に死亡した。