川嶋 隆久, 上沢 修, 大木 伸一, 長谷川 伸之, 小西 宏明, 川人 宏次, 登坂 直規, 三澤 吉雄, 加藤 盛人, 布施 勝生
日本心臓血管外科学会雑誌 26(5) 318-321 1997年9月15日
待機的腹部大動脈瘤 (AAA) 手術53例が対象で, 術前自己血非貯血群31例 (A群) と400ml貯血群22例に分類した. 貯血群は, B群12例 (Fe投与) と, C群10例 (FeとrHuEPO投与) に分類した. 以上3群について, 出血量, 輸血量, 同種血無輸血率, Hb値の推移について検討した. 次に, 最大瘤径7cm以下の43例とそれより大きな10例に分け, 同様の検討を加えた. 全例に術中自己血回収装置を使用した. A群, B群, C群間に年齢, 性差, 手術時間, 出血量, 輸血量に差はなかった. A群では250±370mlの同種血を, B群, C群では400mlの貯血自己血を輸血した. 同種血無輸血率は, A群58%, B群100%, C群100%であった. 術直前Hb値は, 自己血貯血に伴いB群で低下, C群では変わらなかった. 術後最低Hb値はC群で高かった. 瘤径の大小による差はなかった. 術前自己血400ml貯血により, AAA手術における同種血輸血は100%回避でき, rHuEPO併用により, より安全な手術が可能と考えられた.