木村 直行, 川人 宏次, 安達 晃一, 村田 聖一郎, 山口 敦司, 安達 秀雄, 井野 隆史
胸部外科 59(1) 71-77 2006年1月
冠状動脈バイパス術(CABG)後の広範囲冠状動脈攣縮に対するnicorandilの有用性を報告した.対象は,CABG後24時間以内に循環動態が破綻し緊急冠状動脈造影(CAG)で冠状動脈攣縮と診断した7例(男性6例,女性1例・平均年齢60.4歳)で,全例に冠攣縮性狭心症の既往,術前の低左心機能例はなかった.術式はoff-pumpCABG 2例,on-pumpCABG 4例,on-pump beating 1例であった.冠状動脈攣縮の発症形態はショック5例,心停止2例,発症時期は術中2例,5例は術後平均5.2時間に発症した.治療は術中発症例は術直後に,術後発症例は補助循環確立後にカテーテル室へ搬送し緊急CAGを施行した.全例にnitroglycerin,diltiazem hydrochlorideのグラフトおよび冠状動脈注入を行ったが十分な拡張が得られず,nicorandilのグラフトと冠状動脈注入で拡張が得られ,心電図でもST変化が改善し,造影上で攣縮の軽減を確認した.転帰は心停止で発症の1例は蘇生後脳症で11日目に死亡したが,他6例は合併症を残さず回復した