堀江 久永, 岡田 真樹, 小島 正幸, 鯉沼 広冶, 永井 秀雄, 小西 文雄
自治医科大学医学部紀要 28 17-23 2005年12月1日
潰瘍性大腸炎に対するHand-Assisted Laparoscopic Surgery (HALS)の有用性を検討するため,1999年から2004年までに第一期目の手術にHALSにてtotal colectomyが施行された一連の潰瘍性大腸炎患者14例(HALS group)の手術時間,出血量,術後合併症などを1981年から1999年までに通常の開腹手術(conventional procedure)でtotal colectomyが施行された一連の潰瘍性大腸炎患者13例(CP group)のそれらとretrospectiveに比較した。年齢,性別,発症から手術までの罹患期間,プレドノゾロン(PSL)の総投与量,分割手術の方法について2群間に違いは認められなかった。手術時間は2群間で統計学的有意差は認められなかった。術中出血量はHALS群が有意に少なかった。HALSから開腹手術に移行した症例は1例であった。開腹移行の理由は,腹腔内脂肪が非常に多く左手を腹腔内に入れて操作をする際にworking spaceの確保が困難であったこと,炎症が漿膜まで強く及んでおり結腸が後腹膜に強固に癒着していたことであった。HALS群が有意に早く経口摂取が可能であった。術後の入院期間はHALS群が短い傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。術後の合併症については,創感染と腸閉塞の発生率について2群で差は認められなかった。よって潰瘍性大腸炎手術に対するHALSは技術的困難性が比較的少なく,術後の消化管機能の回復も早いため,腹腔内脂肪が多量にある症例や,炎症が強く漿膜まで及んでいる症例を除けば,安全で適切な手術と考えられた。