栗田 真紀子, 堀江 久永, 鯉沼 広治, 宮倉 安幸, 田中 宏幸, 濱田 徹, 熊野 秀俊, 冨樫 一智, 安田 是和, 仲澤 聖則
自治医科大学紀要 32 85-90 2010年3月1日
放射線化学療法により5年間以上Complete Responseが得られている肛門扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は63歳の女性で,肛門部痛,排便時出血を主訴に近医受診し,肛門癌を疑われ当院紹介受診した。直腸診で肛門縁より3cmに下縁を有する前壁中心の半周性腫瘍が認められた。右鼡径部に腫大したリンパ節が触知された。大腸内視鏡検査で同部位に2型腫瘍が認められ,生検で高分化型扁平上皮癌と診断された。遠隔転移は認められなかった。A N2 M0: stage III bの診断で,放射線化学療法を施行した。4門照射で,原発巣,骨盤,両鼡径部に計63Gy照射した。同時に化学療法(5-FU 500mg+CDDP 10mg, 5per week)を3コース施行した。治療終了2週後の大腸内視鏡検査で腫瘍は消失し,5年3ヶ月経過した現在,無再発生存中である。