古屋 隆俊, 田中 信孝, 登 政和, 野村 幸博, 永井 元樹, 和田 郁夫, 中澤 達, 風間 義弘, 坂田 宏樹, 宮戸 秀世, 山形 幸徳, 藤崎 正之
脈管学 42(11) 907-912 2002年11月
最近9年9ヵ月間に受診した254例の非跛裂性腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤で,非手術となった18例を除く連続236例(92.9%)の手術症例を対象とし,80歳以上(43例)と未満(193例)に分けて検討した.術前因子・術中因子・術後因子は両群で有意差はなかった.高齢者群で1例を脳梗塞で失ったが,残る97.7%の症例は平均2.7日で歩行,4.3日で食事を開始,10.5日で退院し,非高齢者群と全く同等であった.特に2日以内に離床できた患者は,3日以上要した者より有意に早く食事が開始され,かつ早期退院となり,高齢者群ほどその傾向は顕著であった.禁煙の徹底,手術侵襲の低減化,及び早期離床は術後合併症予防に繋がり,安全な治療が可能であった.跛裂時の高い死亡率を考慮すると,高齢者でも積極的に待機的手術をすべきであると考えた