本間 祐子, 井上 賢之, 堀江 久永, 太田 学, 太白 健一, 直井 大志, 佐田友 藍, 田原 真紀子, 鯉沼 広治, 味村 俊樹, Lefor Alan K., 平岡 友二, 林 芳和, 砂田 圭二郎, 山本 博徳, 佐田 尚宏
日本大腸検査学会雑誌 2020年10月 日本大腸検査学会
74歳、女性。検診で便潜血検査陽性を指摘され当院を受診し、大腸内視鏡検査を施行した。挿入時にS状結腸の伸展を認め、挿入に2人の医師が関与した。盲腸までの挿入時間は43分であった。全大腸を観察し特に異常は認められなかった。検査後4日目に心窩部痛が出現し、10日目に下腹部痛が出現したため近医を受診。単純CTで骨盤内に腹水貯留を認めたため、精査加療目的に当科紹介となった。来院時、循環動態は安定しており、下腹部に軽度の自発痛および圧痛を認めた。腹部造影CTで脾周囲を中心に、肝表面、骨盤内に液体貯留を認め、脾臓下極の被膜損傷による腹腔内出血と診断した。循環動態は安定しており、モニタリングを行いながら保存的に経過を観察する方針とした。入院4日目の造影CTで腹腔内出血の増悪はなく、入院21日目に退院となった。大腸内視鏡検査後の脾損傷は、遅発性に出現することがあり、稀ではあるが留意すべき検査後合併症の一つである。(著者抄録)