高松 徹, 大竹 はるか, 上原 健志, 新藤 雄司, 池谷 敬, 東海 浩一, 池田 正俊, 牛丸 信也, 浅野 岳春, 松本 吏弘, 岩城 孝明, 福西 昌徳, 鷺原 規喜, 浅部 伸一, 宮谷 博幸, 吉田 行雄
自治医科大学紀要 34 87-95 2012年3月1日
食道・胃静脈瘤の治療指針はほぼ確立されているが,異所性静脈瘤の治療法については一定の見解が得られていない。我々は,十二指腸静脈瘤破裂に対して,透視下に行った内視鏡的硬化療法が有用であった1例を経験した。症例は73歳,肝硬変の女性で十二指腸静脈瘤破裂にて当院へ紹介となった。内視鏡検査にて,十二指腸下行脚に出血点と思われるびらんを伴うF3の静脈瘤を認めた。腹部CTでは膵十二指腸静脈を供血路としRetzius静脈に排血路を伴う十二指腸静脈瘤を認めた。n-butyl-2-cyanoacrylateとlipiodolを3:1に混合し,X線透視下に確認しながら3ヶ所に計6.0ml静脈瘤内に供血路,排血路が造影されるまで局注した。6日後の造影CTでは,静脈瘤から連続する供血路と排血路の一部にlipiodolの集積を認め,静脈瘤はほぼ硬化剤により置換されていた。透視下に硬化剤の注入範囲を確認しながら内視鏡的硬化療法を行うことで合併症なく,また追加治療を必要としない十分な十二指腸静脈瘤の治療が可能であった。