菅生 太朗, 斎藤 修, 斎藤 孝子, 秋元 哲, 井上 真, 安藤 康宏, 竹本 文美, 草野 英二
自治医科大学紀要 34 67-74 2012年3月1日
症例は27歳男性。5年前より顕微鏡的血尿を指摘されていた。仕事で海外駐在の予定があり,赴任前に血尿の精査目的にて入院となった。経皮腎生検を行い,光顕所見ではメサンギウム増殖性糸球体腎炎の所見を認めた。蛍光抗体法にてメサンギウム領域に主としてC1qの沈着を認めた。同部位にC3の僅かな沈着も認めたが,IgA,IgG,IgMの有意な沈着は認めなかった。電顕ではメサンギウム領域にdense depositsを認めた。一方,臨床症状または採血結果からは,膠原病を疑わせる所見はなかった。以上の所見よりC1q腎症と診断した。一般的にC1q腎症では蛋白尿が主体の症状であり,場合によってはネフローゼ症候群を呈することもある。1994年4月から2010年12月までの当科での腎生検施行全3614例中,C1q腎症と診断される患者は他に6例あったが,本症例のみが血尿単独を呈していた。本症例はC1q腎症の発症メカニズムを考えるうえで示唆に富む症例と考えられたので,若干の考察を加えて報告する。