南谷 洋策, 矢澤 徳仁, 尹 浩信, 朝比奈 昭彦, 北川 剛, 北山 丈二, 名川 弘一, 玉置 邦彦
皮膚科の臨床 47(2) 177-181 2005年2月
82歳女.レイノー現象が30年前に出現し,2年前より手指の腫脹,足趾の潰瘍,壊死がみられ,抗セントロメア抗体陽性で,強指症があり,皮膚硬化も認め,生検にてlimited typeの汎発性強皮症と診断されていた.今回,食欲不振,全身倦怠感がみられた後,胸部苦悶感および腹部,心窩部に疼痛が出現した.血液検査にてWBC,BUN,アミラーゼの上昇を,血液ガスにて代謝性アシドーシスを認めた.入院後CKおよびCK-MBは上昇し,心電図にてV2〜V6のST低下,心エコーにて下後壁の壁運動の低下が見られた.緊急胸腹部CTでは上行〜下行結腸が拡張し,上腸間膜動脈に血栓はみられなかったが,狭小化を認めた.非閉塞性腸管壊死を疑い緊急開腹術を施行したところ,回腸末端部〜S状結腸にかけての壊死,および空腸を中心とする斑状の壊死を認めた.また,胆嚢の壊死も疑われた.その後心電図にてV1〜V4のST上昇,冠動脈造影にてLADの100%狭窄を認めたため,急性心筋梗塞と診断し緊急PTCAを施行した.以後,心房細動を繰り返したが,徐々に循環動態,意識レベルともに改善した.経過中,手指のレイノー現象が増悪した